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月別アーカイブ: 2025年5月

第8回船舶塗装雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社 ユーキ.ディープラント、更新担当の中西です。

 

 

船舶塗装の鉄則 〜海を知り、鉄を守る職人たちの心得〜


今回は「船舶塗装の鉄則」、つまり船体塗装におけるプロとしての基本姿勢・技術的原則についてご紹介します。

単なる「塗る作業」ではない、命を守る塗装。その奥には、ベテラン職人たちが代々受け継いできた暗黙のルール=鉄則があるのです。


鉄則①:下地処理は「命の工程」、手を抜くな

 

どんなに高性能な塗料を使っても、下地が整っていなければ長持ちしません

  • 錆を完全に除去(サンドブラストまたは電動工具)

  • 旧塗膜のはがれ・浮きを確実に処理

  • 油分・塩分・水分を残さない

 

「塗る」のは最後。塗る前の“段取り八分”が勝負なのです。


鉄則②:塗料は“環境と用途”で選ぶべし

 

塗料には数多くの種類がありますが、選び方には明確な基準があります。

  • 船底 → 防汚性能が高く耐摩耗性のある塗料(防汚型フッ素系など)

  • 船上 → 紫外線耐性と美観を両立(ポリウレタン系)

  • タンク内 → 耐薬品性や耐湿性が必要(エポキシ系)

 

さらに、使用する海域(温暖か寒冷か)・航行距離・寄港頻度も考慮しなければなりません。


鉄則③:乾燥時間と温湿度を厳守せよ

 

塗装作業では「塗って終わり」ではなく、乾燥・硬化時間を守ることが最も重要です。

  • 湿度が高すぎると塗膜の膨れや密着不良が起こる

  • 気温が低すぎると乾燥が遅れて作業遅延

  • 2回目以降の塗装はインターバルを守ることが必須

 

“急ぎの仕事ほど乾かせ”という言葉があるほど、焦らないことが品質に直結します。


鉄則④:安全管理は「自己責任ではなくチーム責任」

 

船舶塗装は高所・密閉空間・有機溶剤の使用といった高リスク作業です。

  • マスク・防護服・換気の徹底

  • 作業中の声掛けとバディ制

  • 火気厳禁エリアの区分と管理

 

「自分だけ気を付ければいい」ではなく、「仲間の安全も自分の責任」という意識が求められます。


鉄則⑤:見えない美しさこそ“プロの仕上げ”

 

最終的な仕上がりの美しさ、艶、ムラのなさ。これはプロの証です。

  • ハケ目やダレを残さない技術

  • 微妙な色の差をなくす調色力

  • スプレーガンの角度・距離を一定に保つ精度

 

お客様が気づかない部分でも、「塗ってよかったと思わせる仕上がり」を提供するのがプロフェッショナルの使命です。


まとめ:塗装はただの作業ではない、“船の命を支える仕事”だ

 

船舶塗装は、重労働でありながら、高い技術と繊細な感性が求められる職人の世界です。
下地づくりから乾燥、仕上げ、そして安全管理まで——。そのすべてに“鉄則”があり、それを守るからこそ船は長く、安全に海を走ることができます。

私たちの暮らしを支える海運、その根底にある“塗装の力”を、これからも誇りをもって守り続けていきたいと思います。

次回もお楽しみに!

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第7回船舶塗装雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社 ユーキ.ディープラント、更新担当の中西です。

 

 

船舶塗装の歴史 〜鉄と海と塗料の進化が支えた航海の安全〜

 


今回は「船舶塗装の歴史」についてご紹介します。


船は塗装がなければ長く航海を続けられません。潮風、紫外線、波の衝撃、そして船底に付着する海洋生物——。これらすべてから船体を守るのが、船舶塗装という見えない防具です。そんな塗装の歴史は、まさに船と海の闘いの歴史でもあります。


1. 木造船の時代:船底に「漆」や「油脂」を塗っていた

 

古代から中世にかけて、船体は木で造られていました。この頃の塗装といえば、以下のような素材が使われていました。

  • 漆(うるし)や松脂(まつやに)

  • 魚油、クジラ油などの動植物由来油

  • 炭粉や鉛などを混ぜた自家製ペイント

 

これらは防水と防腐を兼ねており、特に船底に塗ることでフジツボや藻の付着を防ぐ効果も期待されていました。これが現在の「防汚塗装」の原型といえます。

2. 近代の鉄船登場と、塗料の役割の進化

 

19世紀後半、蒸気船の普及とともに鉄製船舶が主流となります。木材と違い、鉄は腐りませんが、**錆びる(腐食)**という新たな課題が生まれました。

ここから塗装の目的が、「防水・防汚」から「防錆」へとシフトします。

  • 赤さび色の鉛系プライマーが使われるようになる

  • アスファルトやコールタールを混ぜた黒い防錆塗料が主流に

  • 木造よりも定期的な塗装メンテナンスが重要

 

さらに、戦艦や軍艦では**偽装塗装(カモフラージュ)**や、レーダー反射を抑える色調なども考慮されるようになりました。


3. 戦後〜高度成長期:産業船舶と塗装技術の飛躍

 

1950年代以降、日本を含む世界中で貨物船・タンカー・フェリーなどの大型船が次々と建造される時代に突入します。

これにより、塗装にも性能・耐久性・作業性の飛躍的な進化が求められるようになります。

  • ウレタン・エポキシ系の2液型塗料の登場

  • エアレススプレー塗装機による効率化

  • 塗装前の「ブラスト処理」技術の確立(錆・旧塗膜除去)

 

この時代、塗装作業はまさに「造船の一部」として、重要な工程へと位置づけられました。


4. 現代の船舶塗装:環境と性能の両立へ

 

2000年代以降、環境規制の強化により、塗装も「環境対応」が避けられないテーマとなります。

  • 有害物質(鉛・クロム・トリブチルスズ)の使用禁止

  • VOC(揮発性有機化合物)を抑えた水性塗料の登場

  • バイオフィルムを防ぐ環境配慮型防汚塗料の開発

 

また、船底に付着するフジツボや海藻が燃費に与える影響が再注目され、「塗装が省エネにつながる」という考え方も一般化しています。


まとめ:塗装は“船の皮膚”であり“命綱”である

 

どんなに巨大で最新の船であっても、海の力には勝てません。
その外側を包み、腐食や損傷から守る「塗装」は、まさに船の命を守る役割を担っています。

塗料の進化と、塗る技術の蓄積が、海運の安全と効率を支えてきたのです。

次回は、そんな船舶塗装の現場でプロたちが守り続けてきた「鉄則」についてご紹介します!

次回もお楽しみに!

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